クソニンジンについて
| 項目 | 内容 |
| 学名 | Artemisia annua(アルテミシア アヌア/アンヌアと発音することも) |
| 和名 | クソニンジン(江戸時代からこの名で呼ばれているが命名者は不明) |
| 分類 | キク科ヨモギ属(多年草ではなく一年草である) |
| 英名 | Sweet Annie, Sweet Sagewort (ハーブ) |
| 生薬 | 名称:黄花蒿(オウカコウ) 薬用部位:帯果・帯花枝葉 ※厚生労働省の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト:202506版」には薬用部位について「帯果・帯花枝葉」と記載されている。これはクソニンジンとカワラニンジン(生薬名:青蒿)のみにみられる珍しい表現である。「帯花枝葉」は花がついた枝葉を意味する。花には種があるため「帯果」も含む。 |
| 成分 | アルテミシニン、ビタミン、ミネラル、葉緑素(クロロフィル)、食物繊維、タンニン、β-カロテン、精油成分(シネオール、ツヨン)※他のヨモギと比較して何倍も多くアルテミシニンを含む。アルテミシニン含有量は開花期(満開期)にピークを迎える」「葉と花(花序、穂の部分)に最も多く含まれる」という研究結果もある。 |
| 形状 | 背丈はほとんどの場合1.2mを超える。大きいものは2mを超えることもある。葉の色は黄緑や濃い緑色。一般的なよもぎとは異なり葉の裏面に白い毛は無い・葉は3回羽状に細裂している。 |
| 栽培 | 桜咲く季節に種を蒔く(土には埋めない)、4月〜5月に発芽、水は土が乾かない程度、害虫は夏場はハダニ、乾燥が始まる秋口はアブラムシが集まりやすい。それらの虫は水や湿気に弱いため全体に散水すれば増殖しにくい。土が乾かない程度に水やりをすれば簡単に育つ植物である。キクや朝顔などと同じ短日植物であるため日照時間が長いうちは花が咲かない。室内に入れておくと外より明るい時間が多いためか蕾すらできないこともある。植物は光周期(フォトペリオディズム)」という仕組みで季節を感じ取り、子孫を残すための自然なメカニズムである。クモやてんとう虫はクソニンジンに付着するアブラムシを餌とするため取り除く必要はない。 |
| 香り | 春夏の若葉を指で擦ると清涼感のあるミント系の良いアロマが得られる(水に1日漬けて冷やしておくとフレーバーウォーターになる)。秋冬になり枯れた花を大量に手で掴んで揉みほぐすと春夏の若葉とは異なる非常に強いスパイシーな臭いがする(アルテミシニンまたは他の成分が増加することに関係するかもしれない)。開花後は驚異的な花粉量であるが花粉も臭くは無いがヨモギ花粉アレルギーのある人は近寄らない方が良い。 |
| 利用 | 古代から薬草として利用。お灸もぐさ(熱・煙)・餅草・虫除け・ハーブティー・よもぎ蒸し・入浴剤などに利用。マラリア治療薬の原料として用いられる。 |
| 薬効 | 中国では黄花蒿(オウカコウ)・青蒿(セイコウ)と呼ばれ以下の目的に使用された。 外用:皮膚の痒み止め、傷の化膿止め、タムシ、寄生性皮膚病 内服:疲労、発熱(解熱薬)、熱中症、寝汗、黄疸、神経性熱病 ※生理痛や生理不順などにも効果があるともいわれるが子宮収縮作用があるため妊婦には適さない。 |
| 歴史 | この植物の薬用利用に関する歴史は古く、約2000年以上前の古代中国にさかのぼるといわれ、紀元前168年に書かれたとされる医書『五十二病方』には既に「黄花蒿をマラリアの治療に使う」という記述があり、このマラリアに対する薬効は2000年以上経過した近代研究によって科学的に裏付けらた。 |
| 話題 | 「近年では新たな可能性の研究が進められている」アルテミシニンは、マラリア原虫に対する治療薬としてだけでなく他の可能性もあることから、アメリカの大学の研究者を中心に研究が進められている。最近では「治療薬の何倍もの効果が・・・」という部分だけが話題になることがあるが人に対する効果が明確になったわけではない。研究者たちは、アルテミシニンが「強い作用を示す可能性」、「新しい治療薬になる可能性」、あるいは「特定の疾患に対する治療薬の候補」として研究を進めている。研究は続いているようだが、あくまで研究段階である。 ※アルテミシニンに関する近年の研究は、がん細胞に対する作用がテーマとなっています。誤解を招かないよう、当サイトでは「誰がどのような研究をしているのか?」といった具体的な研究情報は掲載しておりません。事実をお知りになりたい方は学術文献に特化したGoogleの検索エンジン「Google Scholar(グーグル・スカラー)」などで検索してください。 |
| 注意 | クソニンジンは生育過程で葉の色や形が異なることが散見されるが、他のヨモギと間違えることは少ないと考えられる。他の食用ヨモギやニンジンと間違えることには大きな問題はないが、葉の形が似ているものの中に「ドクニンジン」という危険な植物がある。哲学者ソクラテスがこれによって毒殺されたといわれる。キク科ではなくセリ科の小物であり、よく知っている人ならそれぞれまったく異なる植物だがクソニンジンを見たことがない人なら間違えてもおかしくない。若葉の頃はクソニンジンと似ている点が複数あるため注意が必要である。参照:厚労省HP |
基本情報
クソニンジン(糞人参)の学名は Artemisia annua(アルテミシア・アヌア)で、中国名では「黄花蒿(オウカコウ)」と呼ばれます。諸説あるものの「月の女神アルテミスに由来するアルテミシア」。欧米では香り高いハーブティーとして、美容健康のサプリメントや精油として親しまれています。アルテミシアは月の女神アルテミスに由来するそうです。臭くて嫌われそうな和名とは正反対なのです。

近年注目されるヨモギ「クソニンジン」

ヨモギは古来より薬草や健康食として馴染み深い植物です。
「クソニンジン」という強烈な和名を持つこの植物は、キク科ヨモギ属に分類される越年草(または一年草)です。その名前から想像されるイメージとは裏腹に、古来から重用されてきた伝統的な薬草であり、現代医学においてもノーベル賞受賞の鍵となった世界的に極めて重要な存在です。
近年さらなる薬効が期待され、新薬の研究開発が進められています。名前からは想像できない爽やかな香り、欧米ではハーブティーやサプリメントとしても利用されています。
1700年以上の時を経て、近年注目されている植物です。
なぜクソニンジンという名が付けられたのか?
①全体に特異な臭気があることから名付けられた。
小野蘭山による『本草綱目啓蒙』(1806年刊行の巻十一)には、以下の記述が見られる。
「黄花蒿 クソニンジン カハラヨモギ バカニンジン津軽 ゴギヤウ常州 カラヨモギ同上 ヤマニンジン仙台 ゴムケ摂州」
この記述から、「クソニンジン」が黄花蒿(オウカコウ)の和名として、また日本各地での異名(方言名)とともに紹介されていたことがわかる。クソニンジンの名付け親は誰であるかは定かではない。
②葉が細かく羽状に深く裂け、ニンジンの葉に似ていることから付けられた(①②ともに諸説あり)
📌 生態的な特徴
- 草丈と寿命: 一般的な繁殖力の旺盛なヨモギが多年草であるのに対し、クソニンジンは一年草。この一年草という特性が、日本では自生が少なく、希少種と見なされる一因となっている可能性がある。
- 香り: 風が吹いて葉が擦れ合うと、特有の爽やかな香りが漂います。これは、ミントとティーツリーを足して薄めたような清々しい香りで、花が開花する時期までは室内で栽培することで、森の中にいるような清々しい空間を楽しむことができる。
🏡 室内栽培のポイントと限界
クソニンジンは、その独特の香りと外見から観賞用としても魅力的だが、室内で栽培する際にはいくつかの注意が必要である。
開花後の問題: 開花すると、大量の花粉が舞い散る。このため、室内での栽培は花が開花する前までが限界である。
病害虫: 室内で栽培する場合、比較的虫はつきにくい。
開花条件(短日性): クソニンジンは短日植物であるため、日照時間が短くなる頃に花を咲かせる準備を始める。
注意点: 室内で日照量が不足する場所で栽培すると、せっかく育てても蕾ができないこともある。



この大きさになれば日当たりの良い畑などに植え替える方が良い。


この頃が一番爽やかな香りだが風や指で揺れるなど刺激を与えないと匂わない。
種を採集したい場合は受粉率を高めるため3つ以上の株をくっつけて栽培した方が良い。






古来からの伝統的な利用と薬効
クソニンジンは、その強い匂いにもかかわらず、中国では非常に古い時代から重要な薬草として用いられてきました。
- 古典への登場: 中国の薬学書『本草綱目(※1)』にすでに収載されており、その薬効は古くから認められていました。
- 熱病(発熱)の治療: 伝統的な中国医学では、乾燥させた全草が「黄花蒿」あるいは「青蒿(セイコウ※日本ではカワラニンジン)」と呼ばれ、清熱薬(解熱薬)として使用されてきました。具体的には、結核性の熱や慢性の間歇熱、黄疸、神経性熱病、日射病、寝汗、そして後のマラリアなどに用いられていました。
- 皮膚疾患への外用: 全草の煎液は、寄生性皮膚病や田虫(たむし)の患部を洗う外用薬としても使われていました。
- その他の用途: 古くは苦味健胃薬としても用いられていたほか、種子は疲労や寝汗に用いられていた記録もあります。
特に紀元3世紀の医学書『肘後備急方』には「青蒿の絞り汁が病に効く」という記述があり、これが現代の科学的大発見へとつながる重要なヒントとなりました。
現代医学の革命アルテミシニン
クソニンジンから抽出される主成分アルテミシニンの発見は、マラリア治療に革命をもたらしました。
- 発見と受賞: 2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した中国人研究者 屠呦呦(ト・ユウヨウ)氏は、伝統医学の知恵を基に、この植物からアルテミシニン(Artemisinin)を分離・抽出することに成功しました。これは、それまでの治療薬に耐性を持つマラリア原虫にも有効であり、現代科学と伝統医学の融合の成果として高く評価されています。
進む研究:新たな薬効と栽培技術
アルテミシニンは主に葉と穂の部分に多く含まれます。その有用性から、さらなる研究が進められています。
栽培技術の研究: アルテミシニンの効率的な生産を目指し、土壌条件や組織培養、キトサンの葉面散布など、さまざまな技術を活用した研究が精力的に進められています。
新たな薬理作用: 近年の研究では、クソニンジン抽出物やアルテミシニンに抗酸化作用や抗炎症作用が報告されており、特にラットを用いた実験で肝臓保護作用や腎臓保護作用を持つ可能性が示唆されています。
<出典一覧>
京都大学理学研究科・理学部「マラリア治療の難しさとアルテミシニン」(ノーベル賞受賞者、アルテミシニン発見の背景、マラリア治療の重要性に関する記述)
クソニンジン – Wikipedia (学名、分類、和名の由来、特徴、生薬としての利用、アルテミシニンに関する記述)
熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース – クソニンジン(古来の用途:清熱薬として発熱、日射病、寝汗、マラリアなど。寄生性皮膚病、種子の用途に関する記述)
山科植物資料館 – クソニンジン(キク科)(古来の用途:解熱薬として結核性の熱、慢性の間歇熱、黄疸、寄生性皮膚病への外用に関する記述)
薬草と花紀行のホームページ – クソニンジン(古典『本草綱目』への収載、古くから苦味健胃薬に用いたという記述)
公益社団法人 東京生薬協会 – クソニンジン(和名の由来、生薬名、薬用部分、用途、ノーベル賞受賞者に関する記述)
Chem-Station (ケムステ) – クソニンジンのはなし(ノーベル賞につながる歴史的背景、屠呦呦博士と古い薬学書『肘後備急方』に関する記述)
特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会「ヨモギの植物学と栽培」(ヨモギ属の分類、中国での「青蒿」の呼称に関する記述)
J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター(クソニンジンに関する文献情報:アルテミシニン生産を目的とした栽培、組織培養、キトサン葉面散布など、研究テーマに関する記述)
中央動物病院「アルテミシア アンヌア(クソニンジン)の肝腎機能保護力を確認した論文」(アルテミシア・アヌアの肝臓・腎臓保護作用、抗酸化作用に関する記述)
※1『本草綱目』について
中国:明代(みんだい)
原稿完成: 1578年(明の万暦6年)
初版刊行: 1596年(明の万暦24年)
著者:李時珍(り じちん) (著者の李時珍は、刊行前の1593年に亡くなっている。)
中国明代の偉大な医学者、本草学者で、それ以前の誤った情報を正し、約26年の歳月をかけて約1,900種の薬物について記述した。『本草綱目』では、黄花蒿に「臭蒿(しゅうこう)」や「苦蒿(くこう)」といった異名も記載されており、その特有の強い臭気や味を示している。
🇯🇵 日本への影響
『本草綱目』は、刊行後まもなく日本にも伝わり、特に江戸時代の本草学に大きな影響を与えた。
伝来: 慶長年間(1596〜1615年)には日本に渡来した。
影響: 貝原益軒の『大和本草』や、先の質問にあった小野蘭山の『本草綱目啓蒙』など、日本の本草書の基礎文献として長く尊重された。
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